【ニュース】AVマーケットについて 児童ポルノ販売容疑で書類送検 2万人分の会員情報押収 について分析してみた

児童ポルノ販売容疑で書類送検 2万人分の会員情報押収
https://news.yahoo.co.jp/articles/2490701b8fda48959cf1b103a12f2bcdb9b7d765

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今回のニュースで、いろいろな憶測が可能だが、
あえて、ここで犯罪類型から分析をしてみたいと思う。


販売者と購入者それぞれ関連する罪名は以下のような物が想定される



児童ポルノ所持(販売者と購入者それぞれ)
これがこの事件の本丸となっている

これは、単純に所持しているだけで要件を満たしてしまうので、法形式的には日本国内ほとんどの人が処罰対象になってしまう危険がある。
そのため、おそらく警視庁内部のガイドラインでこういった場合には逮捕するというような要件が定められているはずである(警察裁量)。
この点、その道に明るい奥村弁護士も、単純所持だけでは逮捕はないと明言している。
あくまで逮捕がないだけで、書類送検はあるだろう。

したがって、態様が悪質な場合やその他の犯罪との合わせ技一本で逮捕となることが多い。


捜査方針としては、主体と客体どちらから攻めるかということになるが、
今回は、買い受け捜査をしている可能性が高く、また数年前から当該サイトを狙っていたことから、データ(児童ポルノデータ)をベースに捜査を進める可能性が高い。

したがって、児童ポルノを確定させ、商品番号を紐付け、商品番号をソートして、該当した購入者および販売者にあたる。
メールアドレスやその他登録情報から、開示請求をかけ、開示内容をもとに捜査するといったところだろう。

ただし、人数が多すぎる。
販売者、あるいは常習購入者や単純購入者、グラデーションがありすぎて難解である。つまり、海外サーバー全てを抑えられていないことは明らかなため、誤認は避けたいところだろう。

そこでひとまず、販売者をターゲットにする。
販売者を当たり、動画販売の事実を押さえ、その後その購入者を当たるという方針になるだろう。


基本的には、どんな犯罪類型であっても胴元を押さえるというのが警察方針である。
例えば、単純賭博の場合、あえて見逃すこともある。
重要なのは賭博開帳での検挙だ。
胴元を賭博開帳で捕まえ、ディーラーは常習賭博、たまたまそこにいた客を単純賭博で引っ張る。

今回の場合は、胴元である運営と販売者を製造及び販売で捕まえ、購入者は単純所持のオマケになる。
オマケなので、データの破棄は、少なくとも犯罪の構成には全く関係がないように思われる。
あとは、各都道府県警の裁量によるだろうが。

いずれにせよ、結論からいえば、
販売者は児童ポルノの販売事実から、それに紐付く形で購入者も引っ張る。
販売の事実があるためデータの破棄(HDDの破壊)は関係ない。



名誉毀損

こちらは販売者が該当する。
児童ポルノというよりも、盗撮(トイレ、風呂、駅、その他全て)のようなものがそれに当たる。

捜査方針は、親告罪のため、被害届が出ているかで決まる。しかも、①と異なり、データダウンロードの手違いやデータ破棄など、様々なエクスキューズを無視できる。
すなわち、そのデータをサーバーに上げているという事実のみで可能な、最も簡単な捜査になる。
しかしながら、被写体本人の名誉を毀損したか否かはサイトでの説明の仕方にもよるのが難しい法解釈上の点だ。

Twitterで、一文付けて盗撮動画をあげる場合
・サイトで、虚偽説明(被写体の了承を得ているなどの文)を付けて盗撮動画を販売する場合

後者の方は、目的が明らかに盗撮それ自体というよりも、それに販売目的が加わっている。
名誉毀損は、目的罪ではないが、「被写体が承諾を得て金銭を得ている」という社会的評価にかかわる。
Twitterの場合はそのような社会的評価は付随しない。

したがって、被写体の承諾性の虚偽が論点となる可能性が高い。
販売商品の説明文などどこまで捜査できるか不明だが、
基本的には、被害届のあった事案から当たる。

ちなみに、専門的になるが、非親告罪であっても、起訴できないだけで理論上逮捕は可能である(通説)。実務上は、告訴期間が犯人を知ってから6ヶ月以内となっているため、被害届の後6ヶ月間は捜査可能となる。

ただ、今回の場合は難しいだろう。



迷惑防止条例違反
こちらは販売者のみが対象である。

こちらも盗撮動画が対象だ。

法改正により、駅などでの盗撮以外にも、学校や風呂やトイレなどでも対象となった。
つまり、ほとんど全ての場所でアウトになった。

厄介なのは、②と同様に事実認定をどうするかである。
基本的には、場所と日時と被害者と加害者の特定が必要となる犯罪類型である。
・被害者は、上記の通り犯罪の構成要件で必要。
・場所は、それに加えて迷惑防止条例の適用法の問題(どの都道府県の迷惑防止条例を用いるか。罪名および罰上を確定しなければ捜査できない。盗撮行為が東京で起きたか、大阪で起きたか、はたまたそれ以外か?)
・日時は、時効の要件で必要。
・加害者は、①と異なり、販売行為と盗撮行為が分離している可能性があるためである。

そこで、捜査方針としては、
②と同様にならざるを得ない。

盗撮動画販売は、少なくとも③で検挙するのは不可能に近い。
よって、現認・現逮が基本となる。
合わせ技一本で再逮することもあるが、何より現認・現逮だろう。

サイトの動画だけでは、現行法上の中で、捜査方針を立てるのは難しい。
無論、場所が判明してある場合などは、この限りではないが、やはり被害届がない場合は難しい。



④わいせつ物頒布罪(電磁的記録ver.)
この場合も販売者である。

②や③で挙げられなかった悪質な販売者はこちらで挙げる捜査方針を立てる可能性が高い。

わいせつ性概念が刑法学上はやたらめったら議論されるが、基本的に性器が見えたらアウトなので、捜査しやすい。

こちらも①のように客体ベースで調べあげ、商品番号から販売者を押さえる。

比較的捜査しやすく、社会的批判(世間から、これはわいせつではないだろうとの批判)を避けやすい。
というのも、わいせつ性概念はその時々の社会構成員が決めるため、それを芸術だといえば芸術だし、広告表現だといえば広告表現だし、性秩序を乱さないといえば乱さないことになる。
この辺は、判例ベースで多くの学説も出ているため、これだけで司法試験の刑事法の問題を1問作れるほどである。


以上の結論としては、
方針を、
購入者と販売者は①児童ポルノ
販売者は④わいせつ物頒布罪(盗撮モノ)
として捜査を進めるだろう。



その他、児童買春や斡旋仲介、覗き(窃視)による軽犯罪法違反など様々あるが、基本的には現状の証拠のみでは難しく、余罪で挙げるような形になるだろう。



また、今回の報道をきっかけに、
各弁護士事務所が営業を仕掛けている。

そこまで金に困っているのかと思われるほど、
マチ弁やら刑事事件を専門にやるような弁護士事務所やら様々な事務所が2万人?のパイを取り合っている。

基本的には、
外付けHDDによる物的証拠の管理→破壊など
を推奨しているので、まあその通りやるのも一つの手ではあるだろう。


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このようなHDDにデータを移し替えて、
児童ポルノデータなどその他データを破壊するという証拠を、
何かあった時のために警察に提出するというのは、やらないよりはやっておいた方がマシだろう。

明らかに、今回の場合は数が多すぎるため、処分検討の際には考慮される(差をつける)ことがある。

いずれにせよ、HDDの管理→破壊は犯罪の構成要件とは関係が無いが、
数千円でできる程度のことは後のことを考えればやっておくべきなのには違いない。
弁護士事務所で高い相談料を払うより断然経済的である。


今後もこのようなニュースが出てくると思われるが、
対象の絞りは、捜査期間が長引くと時効との関係性が出てくるのである程度で区切るだろう。